日本の医療格差を引き起こすその原因とは

国民皆保険の制度がある日本では、原則的には収入に関係なく希望すれば同じ医療を受けられるため、一見その格差はないのではと考えてしまいがちです。しかし国内の医療格差の問題とは、一刻を争う急性疾患の場合なのです。例えば脳卒中で急に倒れた時に、日本のどこに住んでいたとしても同等の治療を即座に受けることが可能かと言えば、残念ながらそうではないのが現状です。すぐに専門医によって高度な手術が可能な病院は限られていて、大都市には複数あっても地方になると全くない可能性があり得ます。病状によっては地方で倒れた場合、何時間もかけて都市部にある病院に患者を運ぶことは不可能であり、結果として住んでいた地域が悪かったために命を落としてしまうことが考えられるのです。このような医療格差は大学医局の弱体化が原因です。新人医師は内科や外科、産婦人科、小児科などローテーションで経験を積むことで、どんな症状の患者であっても対処できるようにと研修を受けます。しかし各科の医師から見て安心して当直を任せるほどに、各分野の知識を習熟している訳ではありません。そのため、今までは優秀な医師を地方病院に派遣できていた大学医局も、その人材が不足している現状ではとてもそこまで手が回らなくなっているのです。田舎の小さな病院に勤務をするメリットは自分の将来を考えると少ないため、自分からそれを希望する人もなかなかいません。医局からの数年間の人事異動で医師を確保してきた地方病院では、今の状態は深刻な問題です。大学病院の現在の状況が、早急な治療を要する地方の患者にまで影響を及ぼしていると言ってもいいでしょう。